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2022.09.26

緑叡庵を紹介いたします

今夏、本校1階「TEA LIBRARY」内に新たな空間が誕生しました。
「緑叡庵」と名付けられたこの特別な空間は、日本の伝統技術の粋が尽くされ、厳選された素材を用いて建築された茶室です。
本日はこの「緑叡庵」を紹介いたします。

日本の建築における伝統技術は、先人たちの「叡智」の結晶とも言えます。
緑叡庵の左手にある竹穂垣は、上質な竹の枝を職人が一本一本縦に並べていく繊細な竹垣です。
竹の枝の節を中段は水平に揃え、下段はなだらかな山を描くように優雅な曲線で揃えた「節揃え」の技術は、職人技の極みと言えます。

茶室の濡れ縁にも、日本建築の特徴が表れています。
濡れ縁には、内と外の空間を曖昧にして広がりを持たせる意味があります。
腐りにくく水に強い栗材を使用した縁甲板、御影ひるかわ石が使われた束石と沓脱石、杉面皮柱を用いた束、その絶妙な組み合わせが意味を持つ空間を創出しています。

床柱と中柱の間の中板には、透かし彫りの模様があります。
ハートマークが円を描くように配置された模様は、日本の伝統建築によくみられる「猪の目模様」です。
猪の目に由来していて、魔除けや福を招く護符の意味合いがありますが、緑叡庵の猪の目模様は洗足学園の旧校章のイメージを掛け合わせています。

素材にも、厳選された木材や土・竹が使用されています。
扁額には、数百年間火山灰の中に埋もれ、石灰が混入した水の浸透により生まれた自然な黒ずみが趣深い神代ニレが使用されています。
茶室を構成する柱には北山杉の磨き丸太、無目鴨居には現在では入手困難な屋久杉、落し掛けには桐、床柱には椎、中柱には令法、網代天井には杉、光天井には女竹を使用するなど、その役割に応じて素材を使い分け、建築物としての実用と茶における最も大きな道具としての美しさの両者を、この庵は体現しています。

このような伝統技術と素材によって造られた緑叡庵には、まさに本物の持つ力があります。
教えられるのではなく、本物に触れ自ら感じるという経験は、生徒たちにとって必ずや人生の財産になるはずです。
緑叡庵を鑑賞の対象とするのではなく、生徒たちには気軽に素材に触れ、空間にたたずみ、茶を味わい、五感で日本文化を感じ取ることで、日本の古来よりある美への感性や大切にしてきたものの考え方を養ってもらいたいと思います。
そして、日本人として胸を張ってユニバーサルな活躍ができる大人に成長してもらいたいと思います。

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