Today & Tomorrow

校長 宮阪元子

Motoko Miyasaka

~激変する未来社会にも輝き続けられる人へ~

 前例に頼ることのできない時代が始まりました。これまでも、不透明、不連続といわれていた未来ですが、それが、こんなに突然私たちの社会を取り巻くことになりました。でも、よく見てみると、いままでは「できない」と思われていたことが、決して不可能ではなく、自らが新しい未来を作り出していける、その可能性と期待が格段とひろがったとも考えられます。
 だからこそ、これから中学高校時代を過ごす皆さんには、夢や希望、目標を持ってもらいたいと考えます。なぜなら、それこそ、挑戦への原動力となるからです。
 洗足学園中学高等学校は1924年の創立以来、挑戦の連続でした。女性の自立に向けた挑戦です。教育の根底には奉仕の精神が流れています。洗足学園は、自立・挑戦・奉仕という教育理念のもと、生徒たちが日々の実践を通して、自分の将来を考え、未来に向かって、学びを深める場です。

lets今年春に正面玄関横に誕生した"Minerva Cafe"に掲げられたメッセージ

LEARN FROM EVERYTHING

 未来に羽ばたこうとする10代に、そのために必要な力をつけることは教育の使命です。これからは、既存の価値と既存の評価を追い求めるだけでは、十分とは言えません。
 洗足学園では、状況や志向によって常に自己変革を行えるよう、本質的で偏らない学力と様々な自立的能力を付与することに努めています。特徴的なカリキュラムとして、高校3年生までの全員数学必修体制があります。洗足学園に集う生徒たちは、6年間をかけて、知識、教養、あるいは、コンピテンシーといわれる力などを身に着けていきますが、特に、数学を必修で学ぶことの意義は大きいと感じています。物事を論理的、科学的にとらえ、データを扱う力を持ち、説明できる力を身に着けることは、これからのSociety5.0の時代を生きるすべての生徒にとって不可欠です。そのための基礎学力を身に着けるという観点でも、数学を学び続けることはもはや当然とも考えられます。また、理科教育も、決められたことを学ぶだけではなく、例えば、検証目的が与えられ、その目的達成のために自ら実験方法を考えて試してみるというかたちで、生徒たちの柔軟な発想をもとに、学びを深めていく経験を中学生のうちから積んでもらいます。
 一方、答えのない問いに対峙し、自分の考えを他者に伝える哲学的対話を中心とした総合学習、一人1楽器の習得を目指す音楽をはじめとした芸術科目、生徒による行事運営などにみられる高度な自治活動、種々の教養講座などは、学習意欲を引き出し、実戦力を培うのみならず、視野を拡げ、多角的に考え、必要に応じて対応できる柔軟性を身に着けていく上で、極めて効果的に働いています。

EMBRACE YOUR COMMUNITY

 コミュニティーの持つ大きな意味の一つに、他者の価値観と出合う、ということがあります。コミュニティーの中では、自分の思い通りにいかないこともたくさんあります。したがって失敗や挫折も経験します。それこそが、学校での学びの醍醐味です。知識を覚えるだけならば、もはや場はいらない時代かもしれません。インターネット、教科書、先達が残してくださった言葉や書物があれば、どこでも、一人でも思考を深めることができ、あらゆる知識を身に着けることも不可能ではないでしょう。しかし、人々が集う場には、雰囲気とでも表現したらいいのか、あるいは文化でしょうか。そのようなものが出来上がります。これは、目に見えないものですが、それこそが、学校という場が持つ力です。
 洗足学園は光に満ち溢れた学び舎です。日がさんさんと降り注ぐ広々とした校舎。廊下は木材でできているので優しい感じが溢れています。いろいろなところに飾られている芸術作品、壁にたくさん貼ってある興味深いプログラムの紹介、生徒たちは自分たちで選んだプログラムに、臆することなく挑戦します。外に目を移すと、大きなグラウンド、季節ごとに咲き誇る花々、緑が鮮やかな芝生の広場、その上には芝を刈りながら動いているブルーナボンボン、放課後になると聞こえてくるのは、生徒たちが演奏するバイオリンやチェロ、ホルンやトランペットなどの楽しげな音。洗足学園は遊び心がいっぱい詰まった場所です。この環境で、生徒たちは、学びを深め、思索を深めます。いろいろなことにチャレンジをし、友達と出会い、うれしいことも、悔しいことも、うまくいくことも、失敗も、この場所に、集った仲間と経験します。一生忘れられない大切な6年間となります。

THINK FOR YOURSELF

 洗足学園での経験は、学校内の活動にとどまりません。生徒たちは躊躇せずに挑戦の場を選び、挑んでいきます。本校では他流試合と呼んでいますが、国内外を問わず、学外のカンファレンスやコンペティション、ボランティア活動に参加します。ここ数年は、受け継がれてきた経験をもとに、生徒たち自身が他流試合の場を作り始めています。毎年本校で行われる模擬国連JMMUNも、わずか20名ほどでスタートしましたが、海外からの参加も含め総勢400名近くの高校生が集まる大会に成長しました。
 生徒の活動の根底には、社会への貢献という願いを感じます。例えば、苦味成分のデナトニウムを含む生分解性プラスチック『エネルフィッシュ』を開発した生徒たち。研究のきっかけは、魚の誤食リスク軽減とプラスチックごみをなくしたいという強い思いでした。あるいは、学校にも通えない、教育も受けられないというカンボジアの子供たちの現状を知り、いてもたってもいられずに、村の子供たちに日本語と英語を教えるボランティアに参加した生徒もいます。
 女性が活躍する時代、と言われてもう随分と時間がたっていますが、生徒たちを見ていると、社会に貢献したいという願いのもと、既存の価値に頼るのではなく、自分たちが新しいものを作り出そうという気概を感じます。インターネットとゲームが大好きだったある生徒は、大学卒業後、モバイルゲーム会社に就職し、女性向けのゲームを開発してこれが大ヒットしました。その後、ゲーム開発で身に着けた知識を生かして、料理レシピの動画サービスの会社を起業しました。人間に欠かすことのできない衣食住の分野でさらに多くの人々を幸せにしたいと考えたからです。自ら活躍の場を作り出していくという力強さを感じるとともに、働くこと自体に新たな価値を創造し始めているとさえ感じます。女性が新しい価値を作り出していく時代です。
 もちろん、どのような形での貢献を目指すのか、それは一人一人違います。例えば、本校では、ここ数年、医学部医学科への進学が増えています。すでに、多くの卒業生が世界を舞台に医療の現場で社会貢献していることもあり、医療分野への生徒たちの関心は大変高まっています。しかし、医療のどの分野で貢献したいのか、研究者として新薬の開発で貢献したい、臨床医となって目の前の命を救いたい、医療格差をなくしたい、国境なき医師団の一員となる、など、その思いは、一人一人違います。

SOAR

 最終的には、生徒たちには夢や希望をもとに、自己実現を果たしてほしいと考えています。幸福な自己実現、私たちはそう呼んでいます。
 洗足学園でのすべての経験が学びです。
 これからの社会を作る主役である生徒たちには、学びを深め、多くの友と出会い、多彩な経験をし、大空を雄大に飛翔する鳥のように世界へ羽ばたいてほしいと願っています。

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