Today & Tomorrow

校長 前田隆芳

Takayoshi MAEDA

大人が描き出せない素晴らしい未来を
彼女達は創り出していくに違いない

洗足は学校という枠組みを超えた
学びと挑戦の場
Challenging Field

 模擬国連など学外で行われる教育活動、学内では他流試合と呼んでいるものが、ここまでの広がりを持つようになるとは考えてもみませんでした。導入時には、特に意欲的な一部の生徒だけが参加していた他流試合に、今やほぼ全員の生徒が参加するまでに膨らんできていま す。参加プログラム数も200を超え、そのジャンルも多岐に渡り、1年を通して読み切れないほどのレポートが提出されています。
 この他流試合が生徒に与える刺激と教育的効果は実に様々ですが、共通するものとして強く感じているのは、まず第一に「授業や行事に対して、より主体的・意欲的になった」ことです。授業の一コマ一コマ、学校行事やクラブ活動といった時間を、自分の成長の機会、自分を発揮する機会として、有益に活用しようとする姿勢が強く感じられるようになってきました。
 第二には、「人の話や意見に真摯に注意深く耳を傾けるようになった」ことです。模擬国連やディベート大会では発せられた提言や課題の主旨を深く理解し考え、自分の意見をまとめて速やかにレスポンスを返すことが求められています。話し手が何を伝えようとしているのか、そこに矛盾点はないのかを速やかに判断し対応していかなければなりません。そうした経験から特に傾聴力が鍛えられているように思います。それは、各学年で行われている講演会、昨年度から開講している「土曜教養講座」などでの質問の質の高さにも顕著に表れています。こうした変化が、授業をはじめとした全ての教育活動で、内容の濃い時間を創り出すことに繋がってきています。
 第三には、「興味・関心の幅が広がった」こと。学園生活とは違う世界 観や異なる見方や考え方に触れることによって、授業の中にも未知の 広がりが潜んでいることに気づき始めたように思われます。
 中学3年生で執筆する研究論文では、自分でテーマを決めて、その テーマに対して仮説を立て、論理的に文章を展開していくという方法 を取りますが、「日本のODAは間違っていないか」「記者クラブの必要 性はあるのか」といったユニークなテーマも数多く取り上げられてお り、その論文を読んでみると『こんなことを考えているのか・・・』と、そ の着眼点や思考の広がりに驚かされます。
 また、ハーバード大学などの欧米の大学入試に生徒が提出するESS AYや国内大学の推薦入試、AO入試などの志望理由書にも、視点の 斬新さや論点の確かさが感じられるようになっており、ここにも他流 試合の効果が表れてきていると感じているところです。
 第四には、「将来ビジョンの形成に対する効果」を挙げることができ ます。他流試合に参加する生徒が最初に選ぶプログラムは、その生徒 の興味の延長線上にあるものが多いようですが、そこで与えられた新 たな知識や考え方、あるいはそこで出会った人から受けた刺激や感銘 が、自分の生き方や将来像を描かせるきっかけとして作用しているよ うに思われます。学年を追うごとに、それぞれの将来ビジョンは書き 換えられることもあります。しかし、その時点、時点での生徒達の将来 への想いが、極めて真剣で、どこまでも純粋であることは確かです。

学校と教師に求められている
変化と対応への課題

 このような様々な生徒達の変化と成長に対して、当然のことながら 教師も対応のあり方を変えていく必要があります。
 既に授業形態については、昨年度から大きな変更に踏み切り、知識偏 重型から知識活用型へ、発表や討論、意見交換を多く採り入れた探究型 の授業へと移行させつつありますが、さらにこれを推し進めていく必 要があると考えています。しかしながら、内容の濃い討議や意見交換を 行っていくためには、知識の習得と理解を伴う必要があります。単なる 暗記ではなく、一つの課題に対して自ら調べ、学び、考えることによっ て新たな知識を習得することを増やしていく。そうして、点となって頭 に入った知識は、考えることによって線となります。これを、学年が進 行する中でより濃いものにしていかなければなりません。。
 最も大きな課題は教師の側にあり、新しい知識と深い考察によって 既存の知識を見直すとともに、授業に対する意識を変え、生徒達の能力 をより良く発揮させる演出者としての技術を磨いていく必要性を感じ ています。生徒達が授業を受ける姿、講演を聴いている姿を見ている と、発問や提言の出し方、それに対する追及の仕方によって、驚くほど 深い思考に導くことができ、そこから生まれてくる言葉に、さらに高度 な議論にも対応していける能力の高さを感じ取ることができます。生 徒達の理解度や意識レベルの限界点を、教える側が勝手に低く推し 量ってはいけないということでしょう。。
 また、俯瞰して捉えられる力、知識を柔軟に活用できる力を培ってい くために、教科の枠組みを超え、総合的な知識の土台を築き上げていく ことも課題の一つです。現実の事象や現象は、教科の枠組みで分断する ことはできませんし、偏った知識では正しい分析は行えません。高校3 年まで数学の必修に踏み切ったのもこの理由からで、将来どの専門分 野に進んだとしても数学的考え方を持っていることが、その学びを発 展させる鍵になると考えたからです。。
 今後は、化学、物理、世界史、政治経済、家庭科、保健といった各科目の 中で一つの事象や現象を完結するのではなく、教科横断型の授業展開 を通して理解する、いわば学際的な研究ができる資質を磨く教育を推 し進めていかなければならないと考えています。

知識の広がり、思考の深まりから
新たな創造へ

 洗足で開始された学校内外でのチャレンジは、生徒全員へ、そして実 に多様な体験へと、私たちの予測を大きく超えた広がりを見せてくれ ました。そして同時にそのチャレンジの体験は、「新たな知識に触れる」 から、「視野を広げ、思考を深める」ところへと生徒達を導き、今、新たな 創造への力として働き始めているように思われます。既に身近なとこ ろでは、種々のボランティア活動や他校を巻き込んだ交流イベントな ど、生徒達の発案による複数の活動が行われており、さらに新たな活動 の創出へと拡大していく勢いです。そのエネルギーからは無限の可能 性を感じます。
 地球規模の大きな変革期にあって、これからどのような社会が訪れ るのか予測がつかないところもあります。先進国と発展途上国との調 和の在り方も、高齢化社会に向けての様々な問題への解決策も、日本の 進むべき方向も、女性のより良い活躍の場も、今、明確な回答を示すこ とが出来ないのが本当のところだと言わなければなりません。未来は、 未来を生きる生徒たちが、その学びと経験から、考えに考え抜いて、自 ら創り出していかなければなりません。
 学校としてできるのは、創造を可能とする知恵を生み出すために、 しっかりとした知識の土台を作り、視野を広げ、思考の機会を設け、正 しい価値観を植え付け、そして未来への課題を明確に提示していくこ とだけかもしれません。
 洗足学園は、より良い未来を創造できる賢い担い手を育てていくた めに、より多く、より良質なチャレンジの機会を創り出し、それぞれの 成長と進化を全力で後押ししていきます。

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